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2019.08.19更新

 今回はピロリ菌感染についてご説明します。

 『ピロリ菌』多くの方が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。オーストラリアのバリー・マーシャル博士らが胃炎や胃潰瘍の原因が胃のピロリ菌感染であることを証明し、2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで日本でも広く知られるようになりました。現在ではピロリ菌感染が胃がん発症の最大の原因であることもわかっています。

 ピロリ菌はヘリコバクター・ピロリという細菌で、しっぽの様な長い鞭毛(べんもう)をくるくると回転させながら胃粘膜表面の粘液中を移動します。通常細菌は胃酸の強い酸性環境下では生きてはいけませんが、ピロリ菌は胃酸を中和する能力をもち胃の中で長期間生育・増殖します。ピロリ菌が胃粘膜に定着するとCagAなどの発がん毒素を粘膜細胞内に注入し、そこから炎症がおこり、慢性胃炎(萎縮性胃炎)や胃潰瘍・十二指腸潰瘍、そして胃がんが引き起こされると考えられています。

 

●感染経路・感染率
 主に幼少期(~5歳)までに井戸水や家族からの食事の口移しなどによって口から感染するといわれています。日本では衛生環境の改善によりピロリ菌感染率は減少してきていますが、20歳~30歳代の若年者でもまだ10%~20%程度の感染者がいると考えられており、年代が上がとその割合も上昇する傾向にあります。

●早期診断・早期除菌が大切
 胃粘膜の炎症が進行する前の早期の除菌ほど胃がんの予防効果が高いことがわかっています。また次世代への感染拡大防止のため、子を持つ前の世代での除菌が推奨されており、中高生の感染スクリーニング検査および除菌治療を実施している自治体が増えています。

●当院におけるピロリ菌検査法
 当院では健診・人間ドックにおいて主に血清ピロリ菌抗体検査で感染スクリーニングを行っています。陽性(10 U/ml以上)ではピロリ菌の現感染および既感染(除菌済みの方でもしばらくは抗体は高い値が続きます)が考えられます。
 陰性であっても陰性高値(3~9.9 U/ml)の方ではその10%~20%程度でピロリ菌感染者がいると報告されており、その場合には内視鏡検査や尿素呼気試験、便中ピロリ菌抗原検査など複数の検査を組み合わせることで診断の精度を高めることが推奨されています。
 一般的には、バリウムによる胃部エックス線検査でも胃粘膜の不整像によりピロリ菌感染による慢性胃炎を疑う事ができますが、胃粘膜を直接観察する内視鏡検査と比較すると細かな病変に対してはどうしても診断の精度は低くなってしまいます。

●除菌方法
 保険診療で除菌を行う場合には、事前に内視鏡検査を受けることが条件となっています。胃の炎症の程度や胃潰瘍、胃がんが疑われる病変の有無など現在の胃の状況を把握する事はとても重要です。
 標準的な除菌方法はアモキシシリン、クラリスロマイシンの2種類の抗菌薬とプロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)という1種類の胃酸を抑える薬剤の計3種類の薬剤を朝夕食後で7日間内服します。現在、P-CABを用いた治療での除菌成功率は90%以上と報告されており、当院でもP-CABを用いた除菌法(ボノサップパック)を第一選択で行っています。
 除菌薬内服後の6~8週間後に尿素呼気試験により除菌効果判定を行いますが、除菌不成功の場合には抗菌薬を変更し2次除菌を行う事で除菌効果が期待できます。
薬剤アレルギーのある方は事前に担当医にご相談ください。

●除菌後の対応
 成人では口から新たにピロリ菌が侵入し再感染することはほとんど起こりませんが、除菌成功の診断に至った後も少量のピロリ菌が胃内に残っており時間がたつと再陽性化する例が報告されており、頻度は年0~2%程度とされています。すでに炎症が進んでしまっているケースなど除菌成功後でも胃がんが見つかる例もあり、上記の再陽性化の問題からも、内視鏡検査などによる定期的な胃の検査・観察をお勧めしています。

 

 特にまだ一度もピロリ菌検査を行った事のない方、以前ピロリ菌感染と診断されたがまだ除菌を行っていない方、胃の痛み・不快感など消化器症状のある方は健診時や外来診察時にご相談ください。

 

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投稿者: 医療法人社団 霞山会